
「当所有人都被数过以后,剩下的那一个,才最不该存在。」
(全員を数え終えたあとに残る一人こそ、最も存在してはならない。)
調査地・状況説明
雲南省、瀘沽湖。
夜が明けるころ、湖畔には薄い霧が残っていた。
前夜、湖の中央には、持ち主のいない影が浮かんでいた。
だが朝になると、それは跡形もなく消えていた。
異変は終わったように見えた。
村人たちも、いつものように朝の支度を始めていた。
しかし記録を見返した者たちの間で、
小さな食い違いが起きた。
昨夜、湖畔にいた人数が――
どうしても一致しない。
目撃証言・伝承・関係者の言葉
昨夜、湖の近くにいたとされる者は、
青年を含めて六人だった。
そう証言する者もいれば、
いや、七人だったと言い張る者もいた。
帳簿には六人分の記録しかない。
だが、足跡は七人分あるようにも見える。
ある老人は、人数を数え直したあと、
しばらく黙り込んでから低く言った。
我们都被数进去了,可最后还剩一个。
(wǒmen dōu bèi shǔ jìnqù le, kě zuìhòu hái shèng yí gè)日本語訳
わしらは皆、数の中に入っていた。だが最後に、まだ一人余っていた。
誰なのか、と問われると、
老人は首を振った。
顔は思い出せない。
声も思い出せない。
ただ――
「確かに、もう一人いた。」
その感覚だけが残っている。
沈夜の考察
人数的错误,不一定来自遗漏。
(人数の誤りは、必ずしも数え漏れから生じるわけではない。)
人は、足りない数を恐れる。
だが瀘沽湖では、余る数のほうが不自然だ。
足りなければ、失われたと考えられる。
増えていれば、紛れ込んだものを疑えばいい。
だが――
全員を確かに数えたあとで、なお一人余る。
それは計算の誤りではない。
数そのものが、別の層に触れている。
最后剩下的那一个,往往不是‘人’,而是‘位置’。
(最後に余るその一人は、しばしば“人”ではなく“位置”である。)
呼ばれなかった名。
書き換えられた筆跡。
持ち主を失った影。
それらはすべて、
本来ひとつの存在に属していた痕跡だった。
瀘沽湖は奪わない。
切り離すだけだ。
名と人。
影と本体。
記録と記憶。
そのどれかが先に数えられ、
どれかが後に残る。
だから最後に余る一人とは、
新たに現れた誰かではない。
数えきれなかった“残り”そのものだ。
次回予告
その夜、沈夜は湖畔でひとつの足跡を見つけた。
それは行きの跡でも、帰りの跡でもない。
湖に向かって伸び、
途中で、静かに消えていた。
次回、
「途中で消える足跡」
この物語は、実際に噂されている都市伝説をもとに構成されています。